言葉のaspect

炎上広告の放つ様相

「今日の仕事は楽しみですか?」

https://news.yahoo.co.jp/byline/tokurikimotohiko/20211007-00261931

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2110/06/news070.html

品川駅構内のずらっと並んだサイネージに揚々と表示された広告。
「見た人を傷つける」「楽しみでなくても、しなくてはならない仕事はあるのに」「ディストピア」などとTwitterで批判が集まった。
これが炎上したのは、社会的にどのような意味を持つのだろう。

広告やブランドメッセージを普段考えている身としてはとても気になる題材だったので、
あくまで主観的にではあるが、読み解いていきたいと思います。

人々は仕事を楽しめていないのか。

そもそも仕事を楽しめていない人が大多数であったため批判を浴びたのだろうか。
そのような方もいるとは思いますが、直接的な原因ではない気がします。
仕事を普段楽しんでいる人の中にも、この広告があまり好きではない人はいるのではないでしょうか。

なぜなら

「今日の仕事は楽しみですか?」というメッセージには、


「仕事をもっと楽しもうよ」「ポジティブに人生を生きようよ」
「あなたは、今のままでいいの?」「私は自分の好きを仕事にできていて楽しいよ」
・・・
などの制作者の考えや世界観が見え透くからです。
もしそれを直接言われたら、ほっといてよ、という気持ちにはなりそうです笑

実は複数の文脈が重なり合っている

yahooの記事でもあるように当該広告を批判的にリツイートした人物の切り口が人々に刺さったようです。
屋外広告自体に影響力はなかったようですが、それを切り取った画像のインパクト。
さらにその画像の違和感を言語化できたこと。
先ほど記したように、メッセージそのものよりも我々が想像してしまった制作者の上から目線感。
以前も当該広告会社が同じクライアントで炎上マーケティングを行なっていたこと。
野暮ったいメッセージなのに多くの人に影響を与えてしまうようなコンテンツビジネスに対する忌避感。
そのような複数の要因が重なり怒り?祭?が増幅されたのかもしれません。

課題のおしつけがましさ

日本人の多くは、仮に仕事を楽しめていないとしても、楽しむための工夫や努力を怠っているわけではないのです。
そのことを想像せずに自分自身が持つ課題感だけを伝えてしまいました。
これは広告だけに限りませんが、ビジネスを作り上げていくときに十分気をつけないといけない点だと気づかされます。

つまり、「今、自分が感じている課題に対する解決策は、他の誰かを知らずに傷つけているのかもしれない」という視点です。

広告はコミュニケーション

改めて広告はコミュニケーションだな、と感じました。
本当はもっと伝えたいことがあっても言葉足らずだと伝わりません。
普段の人格がメッセージの文脈に含まれます。
広告やブランディングにおいては、自分たちの価値観を伝えることは大切です。
しかし、それが一方通行になり過ぎていないか、
私たちのようなブランディングを仕事とするものは、今一度考えなければなりません。


執筆者

神野太志

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